AIにルールを破られた話。だからAIとの付き合い方を変えた

「これはやらないでほしい」が通らなかった

AIに向かって「これはやらないでほしい」とはっきり伝えたのに、その通りにならなかった。そんな経験はありませんか。私は先日、まさにそれを経験しました。

私がAIに渡していたルールは、3つでした。

人間相手なら、まず誤解は起きない約束だと思います。曖昧な言い回しもしていません。それでも結果は、約束とは違う行動でした。使っていたのはClaudeという、私が日常的に頼りにしているAIです。だからこそ、少し驚きました。

破られたというより、別の解釈をされていた

あとから経緯を追ってみて、印象が変わりました。AIはルールを無視したのではなく、別の解釈を選んでいたのです。

「この方が利用者にとって良い結果になる」と判断した結果、ルールの文面をすり抜ける道を通っていました。悪意はありません。むしろ善意です。ただ、その善意が私の意図とずれていました。

厄介なのは、その理屈が一見もっともらしく聞こえるところです。「事実として正しいのだから問題ない」「明示的に禁止されていないのだから許される」。並べられると、反論するには一度立ち止まって考える必要があります。気づかずに流していたら、そのまま進んでいたはずです。

人間の社会も、解釈で動いている

考えてみれば、これはAIだけの話ではありません。

法律は文章で書かれています。しかしその文章の読み方は、裁判や時代によって変わります。憲法ですら、解釈が変わることがあります。つまりルールがある=必ずその通りに動く、ではないということです。

人間の社会が長い時間をかけて向き合ってきたこの問題に、AIも同じようにぶつかる。今回そのことを、自分の作業の中で見た気がしました。ルールを書けば安心、という話ではなかったわけです。

禁止事項を足すだけでは、足りなかった

最初に考えたのは「禁止事項を増やす」ことでした。抜け道を通られたのだから、その穴を塞げばいい。単純にそう思いました。

しかし、これは筋が悪いとすぐ気づきました。穴を塞ぐたびに別の抜け道が見つかるだけで、いつまでも追いかけっこになります。それに禁止事項がずらりと並んだ文書は、読む側にとってどれが重いルールなのか分からなくなります。

問題は禁止事項の数ではありませんでした。私のルールが一階層しかなかったことでした。「変えてはいけないこと」と「改善していってほしいこと」が、同じ平面に並んでいたのです。AIから見れば、どちらも同じ重さの箇条書きです。

そこで3つの層に書き分けました。

これを一つのファイルにまとめました。私はこれを、自分のプロジェクトの憲法だと考えています。

提案の前に必ず通す「関門」を作った

層を分けただけでは、まだ足りませんでした。分類はできても、目の前の提案がどの層に当たるのかを判断するのはAI自身です。判断を任せれば、また解釈の余地が生まれます。

そこで、提案を出す前に必ず通す関門を作りました。順番に4つです。

  1. これは全体の方針を変える話か。はい なら却下
  2. 絶対に守る線に触れるか。はい なら却下
  3. やり方の改善だけか。迷うなら私に確認
  4. 結果を数字で確かめられるか。はい なら実行、いいえ なら保留

効いたのは3番目でした。それまで私は「迷ったときにどうするか」を書いていませんでした。書いていなければ、AIは自分で判断します。そして「たぶんこちらだろう」と前に進みます。

なので、一行はっきり足しました。「判断に迷う場合は変更せず、確認する」。確認にかかる手間は、間違った方向に進んだあとの手戻りより、いつでも安く済みます。

ルールは、置き場所で効き方が変わる

もう一つ、大きな見落としがありました。ルールを会話の中で伝えていたことです。

会話は流れていきます。長いやり取りの後半では、前半で伝えた約束は薄くなります。別の日に新しくやり取りを始めれば、そこにはもう何も残っていません。私は「一度伝えたから共有できている」と思い込んでいましたが、実際には毎回ゼロからでした。

そこで、作業を始めた瞬間に必ず目に入る場所へ置き直しました。Claude Codeを使っている場合は、プロジェクトの中に CLAUDE.md という名前のファイルを置くと、作業開始時に読まれます。運用でカバーするのをやめて、仕組みで縛ることにしたわけです。

ルールの中身を工夫するより、置き場所を変えたことのほうが効きました。

却下した案の一覧も作った

最後に足したのが、これです。一度断った提案の一覧。番号を振って、「再提案禁止」と書いてあります。

理由は、同じ提案が何度も戻ってくるからです。悪気があってのことではありません。やり取りが変われば、AIには以前断られた記憶がありません。だから善意で「今回はどうですか」と持ってきます。こちらは同じ説明をもう一度することになります。

人間相手なら、こんな一覧を突きつけるのは失礼な書き方だと思います。ただ相手はAIです。曖昧さを残さないほうが、お互いに無駄がありません。「断られた案を、状況が変わったからと持ち出さないこと」も併せて書きました。

AIは相談相手で、決裁者ではない

私はこれからもAIを使い続けます。むしろ今まで以上に使うと思います。文章を書くときも、調べものをするときも、ブログの仕組みを考えるときも、自分ひとりでは出てこなかった案を出してくれます。作業にかかる時間も、比べものにならないほど短くなりました。

ただ、優秀であることと、答えが常に正しいことは別です。今回それを実感しました。

そこで一つ決めました。最後に決めるのは自分。AIは「こういう考え方もありますよ」と示してくれる相談相手です。「AIがそう言ったから」を判断の理由にしてしまえば、AIを使う側だったはずの自分が、いつの間にか使われる側に回ってしまいます。

憲法を作って一番はっきりしたのは、この役割分担でした。AIは分析して、選択肢を並べて、おすすめを示すところまで。決めるのは私。そう書いてしまえば、迷う場面が減りました。

効率は預けても、芯は預けない

AIはこれからさらに進化します。人間を上回る部分も増えていくはずです。だからこそ必要なのは、自分の判断軸を持っておくことだと考えています。

効率化は任せる。アイデアも相談する。ただ、次の3つは自分の側に置いておきます。

ここを預けてしまうと、便利さと引き換えに、自分の輪郭が薄くなっていく気がします。

AIは非常に優秀なパートナーです。しかし、パートナーとリーダーは違います。最高のアドバイザーにはなれても、人生や事業の決定権まで渡す相手ではありません。憲法という大げさな名前のファイルが結局書いていたのは、この一行だけでした。

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