iDeCoは50歳を過ぎても入れるのに、なぜ「早く始めろ」と言われるのか
50歳を過ぎてもiDeCoには加入できる。それなのに「早く始めたほうがいい」という声をよく見かける。この違和感から今回は調べてみることにしました。結論を先に言うと、加入できるかどうかと、思った通りに受け取れるかどうかは、別の話でした。
60歳で受け取れない人がいるという事実
iDeCoの老齢給付金は原則60歳から受け取れます。ただしこれには条件があり、「通算加入者等期間」が10年に達していない場合、受給開始年齢が段階的に後ろへずれる仕組みになっています。
調べたところ、目安は次のようになっていました。
- 加入期間8年以上10年未満:61歳から
- 6年以上8年未満:62歳から
- 4年以上6年未満:63歳から
- 2年以上4年未満:64歳から
- 1月以上2年未満:65歳から
つまり50代の後半になって初めてiDeCoに加入した場合、60歳になっても受け取れず、65歳まで待つケースが出てきます。50歳を過ぎても加入自体はできるのに、「思った時期に受け取れない」という制約が別に存在しているわけです。20〜40代のうちに加入しておけば、この期間ルールは早々にクリアできます。
掛金の上限額と、積立総額の差
iDeCoには加入者の属性によって掛金の上限額が決まっています。2024年12月の制度改正以降、会社員(企業年金なしの場合)は月2.3万円が上限です。自営業者(国民年金の第1号被保険者)は月6.8万円と上限が大きく異なります。
上限が同じだとしても、加入する年齢によって積立総額は大きく変わります。会社員で企業年金なしの上限月2.3万円のケースで単純に計算すると、次のような差が出ます。
- 30歳から60歳まで30年間積立:2.3万円×12ヵ月×30年=828万円
- 45歳から60歳まで15年間積立:2.3万円×12ヵ月×15年=414万円
同じ上限額を使い切ったとしても、開始時期が15年違うだけで積立総額は倍近く差がつきます。これは運用による増減とは別に、掛金そのものの合計額の話です。運用がうまくいけばこの差はさらに広がりますし、うまくいかなくても掛金分の税制優遇は毎年積み重なっていきます。
税制優遇は「毎年」効いてくる制度
iDeCoの掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になり、その年の所得税・住民税の計算対象から外れます。これは1年だけのメリットではなく、加入している年数分、毎年繰り返し発生する優遇です。
30年間加入した人と15年間加入した人では、この控除を受けられる年数そのものが2倍違います。運用益がどうなるかは市場次第で読めない部分がありますが、掛金に対する税制優遇は制度として毎年確実に発生する点は、早期加入のメリットとして見落とされやすいところだと感じました。
60歳まで引き出せない制約は、早く始めるほど気にならなくなる
iDeCoの最大のデメリットとして必ず挙がるのが、原則60歳まで引き出せないという制約です。この点だけを見ると、加入期間が長いほど「資金が固定される期間」も長くなるので不利に見えます。
ただ調べていくと、少し違う見方もできそうでした。20代や30代のうちは、そもそもiDeCoに入れているお金を今すぐ使う予定がないケースが多く、生活防衛資金と分けて考えやすい時期です。一方で50代になってから無理に上限まで積み立てようとすると、退職後の生活費や住宅ローンの返済とぶつかり、掛金額の設定自体が難しくなる場面が出てきます。早く始めることは、単に運用期間を延ばすだけでなく、「無理のない金額で長く続けられる」という設計のしやすさにもつながっていました。
加入時期で変わる3つの軸
調べてみて分かったのは、早期加入のメリットは「増える」という一点ではなく、複数の軸が同時に効いてくることでした。
1つ目は受給開始年齢の分岐点。通算加入者等期間が10年に届くかどうかで、60歳で受け取れるか65歳まで待つかが変わります。2つ目は掛金の積立総額。同じ上限額でも加入年数が15年違えば数百万円単位の差になります。3つ目は税制優遇を受けられる年数。これも加入期間に比例して積み重なっていきます。
どれも「複利で増えるかどうか」という不確実な話ではなく、制度上の仕組みとして決まっている部分です。50歳を過ぎてから加入すること自体は選択肢として残っていますが、この3つの軸で見ると、20〜40代のうちに始めておくかどうかで条件が変わってくることが分かりました。